ECO日記

密着!飼育員の卵たち⑧「動物の命」を考える(後編)

みなさんこんにちは!元飼育員の講師ふくちゃんです!

 

福岡ECOの学生たちが学ぶ授業をご紹介する「密着!飼育員の卵たち」シリーズも、今回で第八弾!

 

前々回・前回に続き、「動物の命について考える」というテーマを取り上げた授業の様子をご紹介します!

 

さて、前回の中編はちょっと堅苦しい話になってしまいましたが、ざっくりまとめておくと

 

  • 日本と欧米では「動物を大切にしよう」の中身が異なる!
  • 日本では「生きること」を重視するので、治らない病気で苦しんでいても「最期まで可愛がる」ことが多い!
  • 欧米では「幸せなこと」を重視するので、治らない病気で苦しんでいたら「苦しみから解放するために安楽死を考える」ことが多い!

 

という感じでした…!

 

…授業でこのあたりまで話すと、学生たちは真剣な表情で

 

「へぇ~…そうなんだ…!」

 

という反応をしつつ、

 

「…でも、なんでそんな違いがあるの…?」

 

と不思議そうにしています。

 

そこで解説するのが、「その人の動物観って、どうやって形づくられるの?」という話です。

 

全てを書くと長くなってしまうので、ここもざっくりとご紹介しますが、動物観は「その国や地域の歴史や風土」と「個人の経験」によって形づくられます。

ここでは「地域の風土」に注目してみましょう。

 

日本には

 

・豊かな海に囲まれている島国(=外国から文化が伝わりにくい)

・多くの家畜が生まれた西アジアから遠い位置にある

 

という特徴があり、ヨーロッパには

 

・ほとんどの地域は陸続き(=外国から文化が伝わりやすい)

・多くの家畜が生まれた西アジアから比較的近い位置にある

 

というような特徴があります。

詳細は省きますが、このあたりの理由から

 

「ヨーロッパでは日本より数千年早い時代から家畜を飼い、お肉やミルクなどを食料にしてきた」

 

という歴史があります

 

…実はこれが、「日本と欧米の動物観のちがい」を生んだ一つの要因です。

 

これもすべてを書くと長くなってしまうので省略しますが、結論をいうと

 

「ヨーロッパでは古くから家畜を飼ってきたことで、その分人間と家畜の間にいろいろな問題が起きていた。これを解決するために『動物を守ろう!』という法律がいち早く整備され、『家畜でもなるべく幸せに暮らせるようにしなきゃ!』という考え方が広まった」

 

というような感じです…!

 

(本来は「日本と欧米に根付いた宗教のちがい」なんかも大きく影響しているので授業で取り上げるのですが、文字で説明しようとするとものすご~く長くなってしまうので、やめておきます…!)

 

…さて、ここまで長くなってしまいましたが、「動物の命」について考えると、どうしても「意見が違う人」と対立してしまいがちです。

 

でも、

 

「そもそも動物観はちがって当たり前だよ」

「そして、ちがいにはこんな理由があるよ」

「だから『良い/悪い』とか『進んでいる/遅れている』というものではないよ」

 

という部分を学んでいれば、対立ではなく「対話」がしやすくなりますよね。

 

…僕は、「動物に関係する仕事」は「動物の命を考える仕事」だと思っています。たったひとつの答えは存在しませんが、学生たちがそれぞれの「自分の考え」をもって、動物たちと一緒に過ごしていってほしいですね…!

以上、「動物の命について考える」授業のご紹介でした!

それでは!

 

 

 

この記事を書いた人…元飼育員講師ふくちゃん

福岡ECOの卒業生。動物園とサファリパークで13年間、飼育員をしていました。好きな動物はフクロテナガザル。担当していた動物は、ゾウ、チンパンジー、キリン、トラなど。現在は福岡ECOで動物や動物園についての授業のほか、文章表現についてのゼミを担当しています。