ECO日記

飼育員ってどんなお仕事?④ 【人工哺育のヒミツ前編】

みなさんこんにちは!元飼育員のふくちゃんです!

 

今回のブログは「飼育員ってどんなお仕事?」シリーズの第四弾!

飼育員が動物の赤ちゃんを育てる「人工哺育」のヒミツを紹介しちゃいますよ~!

 

今回は前編として、赤ちゃんではなく「お母さん」にスポットをあてていきます!

 

さて、そもそも人工哺育は「何らかの事情によって、動物の赤ちゃんを人間が育てること」を言います。

 

(テレビやSNSなどで、タレントさんや飼育員が、動物の赤ちゃんにミルクをあげるのを見たことがある人もいるかもしれませんね!)

 

この「何らかの事情」にはいくつかパターンがあって、

 

・母親が子育てをしない

・母親が子育てをしようとするけど、母乳が出ないなどうまくいかない

・母親が子育てをしているけど、赤ちゃんの体調が悪いから治療しないといけない

・赤ちゃんを人間に馴らすため

 

など、人工哺育をする理由はいろいろとあります。

 

(…昔は「動物を人間に馴らすなら、赤ちゃんの時から育てるのが手っ取り早い」という考え方も一般的でしたが、最近では「動物のことを考えるなら、なるべく親元で育てたほうがいいよね」という考え方がスタンダードになってきました…!)

 

実は、僕もフクロテナガザルという動物の人工哺育を3回経験しているのですが、その3回とも「母親が子育てをしない」というのが理由でした。

 

僕が経験したケースでは、産まれた赤ちゃんに対して母親が「どうしたらいいのか分からない」というような反応をしていました。なので、「子育てをしない」というよりも「子育てのやり方が分からず、できない」というほうが正しいかもしれませんね。

 

ちなみに、フクロテナガザルは3~6頭くらいの家族で暮らす動物なので、子どもは自分の母親が弟や妹の世話をしている姿を見て、「赤ちゃんってこんな感じで育てるんだ!」ということを学ぶと考えられます。

 

それにくわえ、「赤ちゃんの声を聞く」「赤ちゃんと触れ合う」「赤ちゃんがお乳をくわえる」という刺激を受けることで、母親の体内でいくつかのホルモンが分泌され、「母親らしい行動」をとれるようになっていきます。

 

かんたんに言うと、「子どもと触れ合っているうちに、少しずつ子育てスイッチがはいる!」といったイメージですね!

 

…ちょっとややこしい話ですが、この「学び(子育てを見る)」と「本能(ホルモンの分泌)」が組み合わさることで、動物の母親は「適切な子育て」をしているんです…!

 

僕が人工哺育をしたフクロテナガザルの母親は、自身が「ひとりっ子」だったこともあり、子育てを「学ぶ」チャンスがなかったようでした。

 

…ただ、実はこの母親、僕たち飼育員がすぐそばで赤ちゃんを育てる姿を見ているうちに、少しずつ「子育てスイッチ」が入ってきたようで、最終的には自分の子どもを抱っこできるようになりました…!

 

こんな風に、赤ちゃんだけでなく母親のケアもしていく…というのも、飼育員にとって大切なお仕事です。

 

…と、長くなってきましたので、今日はこのあたりで!

 

次回の後編では赤ちゃんにスポットをあて、「人工哺育ってどんなことをするの?」という部分をご紹介していきますね~!

 

それでは!

 

 

 

この記事を書いた人…元飼育員講師ふくちゃん

福岡ECOの卒業生。動物園とサファリパークで13年間、飼育員をしていました。好きな動物はフクロテナガザル。担当していた動物は、ゾウ、チンパンジー、キリン、トラなど。現在は福岡ECOで「陸上動物」「動物園・水族館研究」「アニマルヒストリー」「動物園飼育論」「文章表現演習ゼミ」の授業を担当しています。