ECO日記

飼育員ってどんなお仕事?② 【「動物愛護」と「動物福祉」を考える】

みなさんこんにちは!元飼育員のふくちゃんです!

 

前回に引き続き「飼育員ってどんなお仕事?」シリーズの第二弾をお送りします!

 

「飼育員って、毎日どんなことを考えながらお仕事をしているんだろう…」

 

そんな疑問にお答えすべく、今日はある2つの言葉を紹介します。

それは、「動物愛護」という言葉と、「動物福祉」という言葉です。

 

この2つの言葉は、動物園だけでなく牧場やペットなど、動物のお世話をする業界で広く使われている言葉です。

 

「動物愛護法」という法律の名前にもなっているので、「動物愛護」という言葉を聞いたことがある人は多いかもしれませんね!

でも、「動物福祉」という言葉を知っている人は、あまり多くないのではないでしょうか…!

 

…さて、先に結論から書いてしまうと、多くの飼育員は、いつも「動物福祉」という言葉を意識しながら動物に接しています!「動物愛護」ではなく、「動物福祉」です!

 

では、この2つの言葉にはどんな違いがあるのでしょうか…?

 

言葉の意味を調べてみると、「愛護」と「福祉」には、そもそもこんな違いがあるみたいです。

 

【愛護】…かわいがり、かばい守ること

【福祉】…普段の生活のしあわせ

 

つまり、「動物愛護」には「動物をかわいがって守ること」、「動物福祉」には「動物の普段の生活のしあわせ」という意味がある…ということですね!

 

実は「動物愛護」という言葉や考え方は、日本で生まれたもの。英語に同じ意味の言葉はないので、海外でも「AIGO」と書きます。

 

それに対して、「動物福祉」は「アニマルウェルフェア(Animal Welfare)」という英語を日本語に訳したもの。言葉や考え方が生まれたのは、ヨーロッパの家畜飼育の現場(牧場や屠畜場)です。

 

この「動物福祉」の大きな特徴は、「人間が動物を利用する(例えば、食べるとか動物園で飼うとか)のは仕方がないことだけど、生まれてから最期を迎える瞬間まで、できるだけ苦痛を減らして、しあわせに暮らせるようにしよう」という考え方。

 

「動物愛護」は「動物をかわいがって大切にしよう」「可哀そうな状態にならないようにしよう」という考え方なので、微妙に違うんです…!

 

もちろん、これはどちらが正しくてどちらが間違いとか、どちらが進んでいてどちらが遅れているというものではありません。詳しく書くと長くなるのでやめておきますが、日本とヨーロッパではそもそもの自然環境や根付いた宗教など、暮らしている人々の考え方のもとになる要素が大きく異なっているので、違いがあるのは当たり前なんですよね。

 

(このあたりのお話は、僕が担当している「アニマルヒストリー」という授業で詳しく取り上げています!)

…ここまで書くと、飼育員が「動物愛護」ではなく「動物福祉」を考えている…という理由が、少しずつ分かってきたかもしれません。

 

というのも、飼育員の仕事は「動物をかわいがること」ではないんですよね。

 

もちろん、お世話している動物のことはかわいいですし、大切に思っています。でも、それだけでなく「動物がしあわせに暮らせているかどうか」を考えて、少しでもしあわせに暮らせるように工夫を続けていくのが、飼育員の仕事です。

 

なので、飼育員は常に「動物福祉」を考えながら、お仕事をしています!

大好きな動物たちには、少しでもしあわせに過ごしてもらいたいですからね…!

 

それでは、今回はこのあたりで!

次回の「飼育員ってどんなお仕事?」シリーズもお楽しみに!

 

 

この記事を書いた人…元飼育員講師ふくちゃん

福岡ECOの卒業生。動物園とサファリパークで13年間、飼育員をしていました。好きな動物はフクロテナガザル。担当していた動物は、ゾウ、チンパンジー、キリン、トラなど。現在は福岡ECOで「陸上動物」「動物園・水族館研究」「アニマルヒストリー」「動物園飼育論」「文章表現演習ゼミ」の授業を担当しています。