みなさんこんにちは!元飼育員のふくちゃんです!
今回も引き続き、動物園で使う専門用語を解説していきますね!
さて、まずは前回までに紹介した、飼育員二人の会話例をおさらいしておきましょうー。
A「誰でもハズバンできるように、いろんな人がトレーニングしとかないとね。」
B「だね。BLで出て行った先でも、変わらずにできた方がいいもんね。」
A「うん。福祉面でも大事だしね。」
…前々回と前回のブログで、Aさんが言っている「ハズバン」が、「ハズバンダリートレーニング」というもの、Bさんが言っている「BL」が「ブリーディング・ローン」を略した言葉だと分かりました!
そこで今回は、Aさんが最後に言っている「福祉」という言葉の意味について解説していきますよ~!
さて、この「福祉」という言葉、これまでの「ハズバン」や「BL」にくらべると、聞いたことがある人が多いかもしれませんね。
その意味するところは、「しあわせ」や「ゆたかさ」というもの。
(「児童福祉」は「子どもたちのしあわせ」という感じですね!)
それでは、Aさんが「福祉」と言った理由はなんなのでしょうか…?
…実はこれ、Aさんは「動物福祉」という言葉を省略して、単に「福祉」と言っています。
この「動物福祉」という言葉は、ヨーロッパの家畜(牛や豚など)飼育の現場で生まれたもので、
「動物の暮らしから苦痛を減らして、できるだけ幸せに生きてもらおう!」
という考え方のことです。
(英語では「Animal welfare(アニマル・ウェルフェア)」といいます。)
この「苦痛を減らす」には
「のどが渇いたら新鮮な水が飲めるようにしておく」
「温度や湿度がちょうどいい環境で暮らせるようにしておく」
「もしもケガや病気になったら、適切な治療を受けられるようにしておく」
など、いくつかの意味があるのですが、「適切な治療を~」の部分が、Aさんが言いたいこと!
前々回のブログで「ハズバンダリートレーニングは、健康管理に役立つ動きを動物に覚えてもらうこと」と紹介しましたが、それは「動物がケガや病気をした時に、適切な治療を受けられるようにしておく」という意味合いもあるんです…!
(具合が悪くなってから「お腹見せて!」と言っても、動物は従ってくれません。普段から「お腹見せて!」の練習をしていれば、いざという時に検査や治療がしやすくなるということですね…!)
…これでやっと、AさんとBさんの会話の意味がつながります…。
その全貌はこちら!
A「(決まった担当者だけじゃなくて)誰でも『健康管理のための動きをさせられる』ように、いろんな人が『動きを覚えてもらう練習』をしとかないとね。」
B「だね。『いつか繁殖のために引っ越していった』先でも、変わらずに『健康管理のための動きを』できた方がいいもんね。」
A「うん。『必要な時に検査や治療が受けられるようにしておくことが、動物のしあわせを考えるうえでも』大事だしね。」
…と、AさんとBさんは、専門用語を使いながら、「お世話している動物の将来の幸せ」を考える会話をしていたんですね。
難しそうな専門用語が並んでいましたが、その中身は、とってもやさしい話題なのでした…!
それでは、次回のブログもお楽しみに~!
この記事を書いた人…元飼育員講師ふくちゃん
福岡ECOの卒業生。動物園とサファリパークで13年間、飼育員をしていました。好きな動物はフクロテナガザル。担当していた動物は、ゾウ、チンパンジー、キリン、トラなど。現在は福岡ECOで「陸上動物」「動物園・水族館研究」「アニマルヒストリー」の授業を担当しています。