ECO日記

動物園の専門用語を解説!②「BL」ってなに?

みなさんこんにちは!元飼育員のふくちゃんです!

 

前回に続いて、動物園で使う専門用語を解説していきますよ~!

 

さて、まずは前回紹介した、飼育員二人の会話例をおさらいしておきましょう。

 

A「誰でもハズバンできるように、いろんな人がトレーニングしとかないとね。」

B「だね。BLで出て行った先でも、変わらずにできた方がいいもんね。」

A「うん。福祉面でも大事だしね。」

 

前回のブログでは、Aさんが言っている「ハズバン」が、「ハズバンダリートレーニング」というものを略した言葉だと解説しましたね。

 

今回は、Bさんが言っている謎のアルファベット「BL」の意味を解説します!

 

 

この「BL」、そのまま「ビーエル」と読むのですが、これもまた、とある用語を略したものです。

 

その用語は…

 

ブリーディング・ローン

 

というもの!

 

(「Breeding 繁殖」と「Loan 貸す」の頭文字をとって「BL」です!)

 

一般的には知られていませんが、動物園や水族館でよく使われている言葉で、簡単に言うと

 

「繁殖を目指して動物を貸し借りするしくみ」

 

のことです。

 

…ちょっと複雑なところもあるので、ここからは、架空の動物園を例にして説明していきますね!

 

・・・

 

・≪ふくちゃんZOO≫という動物園が、「キリンの繁殖をさせたい!」と考えました。しかし、ふくちゃんZOOにはオスキリンしかいません。

 

・そこで、メスキリンがたくさんいる≪エコ・サファリパーク≫に、「メスキリンを一頭、お嫁さんにください!」とお願いしてみることに。

 

・エコ・サファリパークは「いいよ!」と許可してくれましたが、「でも、大切なキリンだから、あげることはできないよ!」と言っています。

 

・そこでふくちゃんZOOは、「持ち主はエコ・サファリパークのままでいいから、メスキリンを貸してもらえませんか…?子どもが産まれたら、一頭目はエコ・サファリパークで飼育していいので!二頭目がうまれたら、ウチで飼育します!」と提案しました。

 

・エコ・サファリパークは「それならいいよ!この子の子どもが産まれるのを楽しみにしてるね!」と、OKしてくれました…!

 

と、こんな風に、「持ち主は前の動物園のまま、繁殖のために動物を貸し借りする」という仕組みが「ブリーディング・ローン」です。

 

(例のように「子どもが産まれたら一頭目はこっちの動物園で飼育する」というような決めごとをつくる場合でも、子どもの引っ越しは、もちろん親離れの時期を過ぎてからです…!)

 

…動物園を管轄している自治体や、運営している会社の方針はどうしても違うものなので、

 

「繁殖はさせたいけど、譲り渡すことはできない…」

「同じくらいの価値がある動物と交換じゃないと引っ越しはダメ」

「動物の売買はできない!」

 

など、いろいろな事情が動物の引っ越しや「嫁入り・婿入り」の壁になってしまうんです。

 

(どの動物園にとっても飼育している動物は大切なので、仕方のないことです。)

 

それでも、ほとんどの動物園は「ブリーディング・ローンならいいよ!」という考えです。

希少な動物の数を増やしたいという気持ちは、みんな一緒ですからね!

 

この仕組みがあるおかげで、日本中の動物園で協力し合いながら、希少な動物の繁殖を目指す…という取り組みがやりやすくなっています。

 

 

…というわけで、Bさんが喋っていた内容が分かりましたね!

Bさんは

 

「だね。『いつか繁殖のために引っ越していった』先でも、変わらずに『健康管理のための動きを』できた方がいいもんね。」

 

と言っていたんですね~。

 

AさんとBさんの会話の内容が、少しずつ明らかになってきましたね…!

(謎解きみたい…笑)

 

次回は、残る一つの気になる言いまわし、「福祉」を解説していきます!

 

それでは、次回をお楽しみに~!

 

 

この記事を書いた人…元飼育員講師ふくちゃん

福岡ECOの卒業生。動物園とサファリパークで13年間、飼育員をしていました。好きな動物はフクロテナガザル。担当していた動物は、ゾウ、チンパンジー、キリン、トラなど。現在は福岡ECOで「陸上動物」「動物園・水族館研究」「アニマルヒストリー」の授業を担当しています。