ECO日記

大学と専門学校…飼育員になるならどっちがいい?part②

みなさんこんにちは!元飼育員のふくちゃんです!

 

前回から続いて、「飼育員になるなら、大学と専門学校のどっちがいい?」という疑問にお答えしていきます。

今回のテーマは、「大学で学ぶメリット」についてです!

 

 

僕が思う、大学で学ぶ主なメリットは…

①動物を「研究」する方法をしっかり学べる

②4年制大学を卒業すると「学士」号が取得できる

③学科によっては「学芸員」の取得が可能

の3つ。

 

①については、「大学は研究機関」とも言われるくらいなので、やはり研究についてしっかり学べるのは大きなメリットです。

 

というのも、実は動物園では、お世話している動物たちについて、日々いろいろなことを研究しているんです。

その主な目的は、「動物たちの生活をより良くするため」。

 

 

例えば、「お世話しているチンパンジーを幸せにしたい!」という目的がある場合…

 

  • チンパンジーの今の生活を調べる

・「行動観察」という調査研究の手法で、チンパンジーが一日のうちどのくらいの時間寝ていて、遊んでいて、食事をしていて、退屈そうにしているのかを調べる

  • 問題点と改善点を見つける

・退屈そうにしている時間が長い⇒退屈な時間を減らしてあげたい!

・食事を5分で終えて、そのあとが退屈そう⇒食べものの与え方を変えた方がいい?

  • 改善への仮説をたてる

・体を動かせる遊具(ロープなど)を増やすといいかも?

・時間をかけて食事できるように、食べ物を小さく切るといいかも?

  •      〃             運動場に隠すといいかも?
  •      〃        木の葉みたいに硬い食べ物を増やすといいかも?
  • ひとつずつ試してみて、どのくらい効果があるかを「行動観察」で調べる

・遊具を増やしてすぐは退屈そうな時間が減ったけど、一週間すると慣れて元通り…

・食べ物を小さく切るだけだと、食事時間が20分長くなった

・食べ物を運動場に隠すと、食事時間が10分長くなった(意外にすぐ見つける)

・木の葉を増やしたら、食事時間は15分長くなった+枝でよく遊ぶようになった

  • 分かった結果をまとめて、最適な改善案をたてる

・遊具は定期的に新しいものと入れ替えると飽きずに遊んでくれるかも!

・食べ物もそれぞれの与え方を組み合わせて日替わりにするといいかも!

  • 改善案を試して、結果を「行動観察」で調べる

・二つの案を組み合わせると、食事時間が30分長くなって、退屈そうな時間が

50分(食事時間の増えたぶん+遊ぶ時間)短くなった!!

 

…というような手順で、チンパンジーの暮らしを少し幸せにする(退屈を減らす)ことができます!

 

「研究」の手法を応用することで、それまでは「なんとなく退屈そうだな…遊具を増やしたらなんとなく楽しそうにしてるな…。」という飼育員の主観だったものが、「一日のうち90分も退屈そうにしていたのが、改善案を試したら40分に減った!」と具体的に考えられるようになったわけですね。

これなら、「残りの40分をゼロにするために、これからもいろいろ試すぞ!」というように、今後の取り組みにもつなげやすくなりますよね!

 

…と、これはほんの一例ですが、動物園ではこんな風に「研究」という技術を活用することができます。

 

 

次に②の「学士号取得」について。

 

4年制大学を卒業すると、「学士」という称号を得ることができます。

詳しい説明は省きますが、一部の動物園の募集要項には「4年制大学を卒業していること」(つまり学士を取得していること)という記載があります。

また、これも動物園の方針によりますが、大学卒の方が、高校卒より初任給が高い場合も。

 

これだけでも、大きなメリットと言えますよね。

 

ただ、僕が働いていた動物園では、「飼育班長」「飼育主任」「飼育係長」などの役割や役職につくのに学歴は全く関係なかったので、そこについては「飼育員になってからどう働くか」の方が大切とも言えるかもしれません。

 

最後に③の「学芸員資格」について。

 

そもそも、学芸員は「博物館で働く専門的職員」のこと。「学芸員資格」を取得するためには、4年制の大学を卒業する…などの条件を満たす必要があります。

 

それに動物園とどんな関係が…?というと、実は一部の動物園は、法律上では「博物館相当施設、博物館類似施設」と呼ばれています。

動物園は、「生きている展示物(剥製じゃなくて本物の動物)がいる博物館」とも言えるということですね!

 

なので、学芸員資格を持っていると、飼育員の採用試験を受けたときに「この学生さんは、博物館や展示物の解説についての知識を持っているんだな!」というひとつのアピールポイントになるわけですね。

 

(実際、学芸員資格をもっている飼育員も、動物園業界にチラホラいます。)

 

ただ、その他の評価をひっくり返すほど重要視されることはほぼありませんし、ほとんどの動物園では、資格を活用する仕事は多くないのが現状です。

 

つまり、位置づけとしては「アピールポイントのひとつにはなるよ!」くらいのものでしょうか。

もちろん、動物園の方針によっては「博物館的な取り組みに力を入れたいから、今回の採用試験では絶対に学芸員資格を持っている人材がほしい!」という場合もあるかもしれませんが、稀なケースだといえます。

 

この3つが、僕が思う「大学で学ぶメリット」です。

 

…さて、今回はここまで!

 

 

次回は、「専門学校で学ぶメリット」について紹介していきますよ~!

 

それでは!

 

この記事を書いた人…元飼育員講師ふくちゃん

福岡ECOの卒業生。動物園とサファリパークで13年間、飼育員をしていました。好きな動物はフクロテナガザル。担当していた動物は、ゾウ、チンパンジー、キリン、トラなど。現在は福岡ECOで「陸上動物」「動物園・水族館研究」「アニマルヒストリー」の授業を担当しています。