ECO日記

「4年も専門学校に通うってアリ?ナシ?元飼育員がお答えします!」前編

みなさんこんにちは!元飼育員のふくちゃんです!

 

突然ですが、みなさんは「専門学校に4年間通う」と聞いて、どう思いますか?

 

と言うのも、世間的には「専門学校は2年間通うところ」というイメージが強いようですが、最近ではよりしっかりと学んでから社会に出てもらうために、3年制や4年制のクラス(専攻)をつくる専門学校も増えているんです。

 

…ただ、僕の周りでは、こんな声も聞こえてきます。

 

「専門学校の良さって、2年で卒業してすぐ就職できるところじゃないの?」

「4年も通う意味あるの?そんなに何を勉強するの?」

 

…ちょっと強めですが、僕も2年制の専攻を卒業して飼育員になった身なので、言いたいことは分かります!笑

 

ですが、飼育員として13年間働いてきた経験から言うと、僕は

 

「いまの時代、動物園や水族館で働くなら、専門学校に4年間通うのは大いにアリだよ!」

と思っています。

 

僕がそう思う理由は、「いま飼育員に必要な知識や技術は、2年間じゃ学びきれない」と考えているから。

 

そこで今日は、

①飼育員として働き続けるには、いろいろな知識や技術が必要!

②時代の変化によって、飼育員に求められるスキルが増えている!

③動物以外の知識も大切!もしもの「セカンドキャリア選び」にも活きる!

 

という3つのテーマに分けて、僕なりの考えをまとめてみます!

 

「飼育員になりたいけど、進路はどうしたらいいか分からない…」と思っている人は、ぜひ参考にしてみてくださいね!

 

 

①飼育員として働き続けるには、いろいろな知識や技術が必要!

 

意外かもしれませんが、飼育員として働くには、幅広い知識や技術が必要です!もちろん、動物をただお世話するだけなら

 

・その動物が何を食べるか

・どうやって掃除をしたらいいか

 

さえ知っていれば良さそうですが、実際には飼育員はいろいろなことを考えながらお世話をしています。

例として【エサが原因でキリンがお腹を壊したかも!】という時に、飼育員が考えることを書き出してみます!

エサの問題が原因なら…

●葉っぱの量が少なかったかな?

⇒草食動物は食物繊維(葉っぱに多く含まれる)の量が少ないとお腹を壊すことも

●葉っぱの質や種類が悪かったかな?

⇒葉っぱの種類によっては毒性があるものも

●干し草の質が変わった?悪かったかな?

⇒季節によって干し草の質(硬さや食物繊維の量)が変わる。干し草にも種類がある

●固形飼料の量が多かったかな?

⇒固形飼料は栄養が豊富だけど食物繊維は少ない。量が多いとお腹を壊すことも

●固形飼料の種類を変えたかな?

⇒固形飼料の種類を変えると「腸内細菌」のバランスが崩れてお腹を壊すことも

●葉っぱ、干し草、固形飼料のバランスが悪かったかな?

⇒バランスが急に変わると「腸内細菌」のバランスが崩れてお腹を壊すことも

 

…と、こんな感じです!

 

これらのことを考えるためには、少なくとも

 

○草食動物の食性や消化の仕組み

○キリン特有の食性や消化の仕組み

○飼料の種類や質による違い

 

という3つの知識をもっている必要があります。

 

また、同じ草食動物でもキリンとシマウマの消化の仕組みは違いますし、それがライオンなどの肉食動物となればなおさら。

飼育員になってずっとキリンだけのお世話をする…ということはまずないので、それだけ幅広い動物について学んでおいた方がいいわけですね!

 

ここではエサや消化の仕組みについての知識を取り上げましたが、動物のお世話をするためには、他にもいろいろなことを学んでおく必要があります!

 

 

 

②時代の変化によって、飼育員に求められるスキルが増えている!

 

次は、時代によって飼育員に求められるスキルが変わっているよ!というか増えているよ!というお話。

 

そもそも、日本に初めて動物園ができたのは、東京に恩賜上野動物園が開園した1882年。今から140年も前のことです。

このころは「どう飼えばいいか」がまだ分かっていない動物がたくさんいたので、試行錯誤しながら「動物を死なせず、長生きさせる」のが飼育員の主な仕事だったようです。

 

(今より情報もモノも圧倒的に少ないなかでの飼育…その苦労を想像するだけで頭が下がります…!)

 

その後、多くの飼育員たちの努力や工夫によって、動物たちが長生きできるようになってきました。そして動物についてたくさんのことが分かってくると、「こんな飼い方をしたらもっと健康になったよ」とか、「こんなエサを増やしたらうまく繁殖したよ」という報告が増えてきます。

つまり、このころになると、飼育員の仕事は「動物をただ飼うこと」から、「健康に飼うこと、そして繁殖させること」に変化したと言えます。

 

そして時代がもっと進み、僕が飼育員になった13年前の動物園業界では、「動物の暮らす環境を豊かにする」という意味の「環境エンリッチメント」という用語が盛んに使われていました。

(例:コンクリートしかない運動場に土を敷いたり、植物を入れたり、遊び道具を入れたりする=運動場を豊かにする)

 

飼育員の仕事に、「動物の『体の健康』だけでなく『心の健康』にも気をつけること」という考え方が広がってきたわけです。

 

さらに最近では、「動物福祉」という考え方が広がっています。これは「動物の幸せを科学的に考える」というもので、「体の健康」「心の健康」からもう一歩踏み込んだ考え方と言えます。

 

…長くなってしまうので具体例は挙げませんでしたが、これだけを見ても

 

「動物を死なせず、長生きさせる」⇒「健康に飼う、繁殖させる」⇒「体だけでなく心の健康も考える」⇒「動物の幸せを考える」

 

と、飼育員の役目が変わっている(正確に言えば増えている)ことが分かりますね!

 

これはつまり、「飼育員として働くために求められるスキルは増えている」ということです。なので、専門学校で学ぶ内容が増えるのも自然な流れと言えるかもしれません。

 

実際、僕は在学中に「環境エンリッチメント」や「動物福祉」についてほとんど学んでいませんが、いまの福岡ECOでは「動物園・水族館&テクノロジー専攻(4年制)」や「動物園・動物飼育専攻(3年制)」で、これらについて一年間やそれ以上学ぶカリキュラムが組まれています。

 

(僕は働きながらお金を出して講習会や勉強会に行ったので、正直うらやましい…!)

 

 

 

…さて、残るはあとひとつですが、長くなってきたので今回はこのあたりで!

次回は

「③動物以外の知識も大切!もしもの「セカンドキャリア選び」にも活きる!」

についてです。お楽しみに!

 

それでは!

 

 

 

この記事を書いた人…元飼育員講師ふくちゃん

福岡ECOの卒業生。動物園とサファリパークで13年間、飼育員をしていました。好きな動物はフクロテナガザル。担当していた動物は、ゾウ、チンパンジー、キリン、トラなど。現在は福岡ECOで「陸上動物」「動物園・水族館研究」「アニマルヒストリー」の授業を担当しています。