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先生×卒業生対談 2

特別対談
水中の世界に感動する。
忘れられないその経験をみんなに伝えたい!

いきいきと泳ぎまわるペンギンが話題のサンシャイン水族館「天空のペンギン」。この展示をプロデュースした中村元先生と同水族館で働く卒業生に、水族館で働く喜びを語ってもらいました。

先生×卒業生対談

大村さん・中村 元先生・中澤さん・千葉さん

お客さんに身近なショーで、海獣の習性を伝えられたら

中村 千葉さんはアシカを担当しているそうですね。サンシャイン水族館のアシカショーは、お客さんが本当に楽しそうだよね。

千葉 はい。なんといっても距離の近さが大きな魅力だと思います。ただ、ショーを運営する側からすると、何が起きても対応できるように常にアシカを視界に入れておかなければいけません。同時に、お客さん1人ひとりとアイコンタクトをとるようにしているので大変です。デビューの日は本当に緊張しましたし、これまでもいろんな失敗をしています。ステージに出て、「こんにちは!」と言ったとたんに転んでエサをばらまいてしまったり。あのときは、客席がざわついていましたね。

全員 (笑)。

中村 アシカは昔から好きだったの?

千葉 水族館の仕事に興味を持ったのは、イルカショーを見たことがきっかけでした。でも、学生時代の実習でアシカが好きになったんです。働きはじめて1年ぐらいはペンギンを担当していましたが、「やらせてほしい」とお願いして、アシカチームに異動させてもらいました。いまはアシカのほか、モモイロペリカンやバイカルアザラシも担当しています。

中村 柵を設けないここのアシカショーは、海獣が他種と争わないという生態を表している展示です。トドの横にキタオットセイががいても自然界では追いかけたりすることはないからね。ショーを通してアシカ達の習性もお客さんに伝えられたらいいね。

人気上昇中!カワウソの魅力を全国へ

先生×卒業生対談

中澤 私の担当はペンギンとカワウソ、それからトカゲやカメなどの爬虫類です。バックヤードではミナミコアリクイも担当しています。

中村 爬虫類は平気でしたか?

中澤 以前は苦手でした。学校の飼育ルームにもたくさんいましたけど、私はさわることもできないぐらいで。でも、だんだん愛着がわいてきて、虫もダメだったんですけど、いまではエサとしてコオロギをあげたりしています。はたから見たら不思議でしょうね。トカゲに向かって「すごいね、いっぱい食べるね」とか、「ちょっと待って。いまあげるから」と話しかけているんですから。

中村 伝わっているかな?

中澤 伝わってないんじゃないかな…(笑)。ただ、一番かわいいのはやっぱりカワウソです。学校に入学したのはイルカのトレーナーになりたかったからで、実習もイルカのトレーニングを経験できる水族館に行ったんです。そこでツメナシカワウソに出会いまして、握手をしたり、エサやりを体験したりしているうちに大好きになりました。実習が方向転換のきっかけになったのは、千葉さんと同じですね。

千葉 本当だね。

中澤 その当時、カワウソはいまほどの人気はなかったので、「みんなにこの魅力を伝えたい!」と思うようになりました。サンシャイン水族館で働きたいと思ったのも、カワウソが理由の1つなんです。

中村 サンシャイン水族館には、カワウソが目当てのお客さんもいらっしゃるでしょう?

中澤 はい。カワウソがいる全国の動物園、水族館に熱心に通う方たちがいて、カワウソ好きのあいだでは「ウソラーさん」って呼ばれているんですけど、そうした方たちの中にはツイッターのアイコンを「やまと」(サンシャイン水族館で人気のコツメカワウソ)の画像にしたり、「やまとに会いたい」とツイートしてくださる方がかなりいますね。

中村 一般の方にももっと魅力が知られるようになるといいね。

中澤 はい。サンシャイン水族館が全国の動物園や水族館によびかけて、「カワウソゥ選挙」という個体の人気ランキングを決めるイベントも開催しています。昨年は50 万票以上の投票があって、認知度は上がっているのかなと思います。「カワウソゥ選挙」では、私も「あそこの水族館にはかわいい子がいますよ」「エントリーしてほしいですよね」と提案したりしました。カワウソの魅力をよりたくさんの方に知ってほしいですね。

ペンギンの本来の姿がわかる空を飛ぶ「天空のペンギン」

大村 僕も中澤さんと同じで、ペンギンとカワウソ、それから爬虫類、ミナミコアリクイを担当しています。

中村 ペンギンって実は力がすごく強いよね。ペンギンに初めてふれたのはいつですか?

大村 実習でふれる機会はありましたけど、「ペンギンってこんなに重いんだ」とか、しっかりと観察するようになったのは働きはじめてからですね。本当に力が強くて、叩かれると痕が残って大変です。でも、やっぱりかわいいですし、イベントでお客さんが喜んでくれている姿を見ると嬉しくなります。

先生×卒業生対談

中村 大村君と中澤さんが担当しているペンギンの水槽は、世界でも最良の状態でお客さんに見てもらっているんだよ(笑)。

大村 本当にそう思います。水族館の中には、お客さんがペンギンを素通りしてしまうところもあると思うんです。でも、中村先生が手がけられた「天空のペンギン」や「草原のペンギン」の展示は、お客さんが夢中になって見てくれますね。僕は地方の出身なので、都心のビルの屋上でペンギンを見られることがまず衝撃でした。しかも、空を泳いでいたり、生息地の環境をイメージした環境でペンギンを見ることができる水族館は他にはないと思います。

中澤 私の中では、水族館や動物園にいるペンギンって陸地で立っているイメージなんです。でも、自然界のペンギンは昼間はずっとエサになる魚を探して海に潜っていますよね。本来の生態をお見せするには、「天空のペンギン」は素晴らしい水槽だなと感じます。中村 嬉しいことを言ってくれるなあ(笑)。

3人 (笑)

中村  「天空」「草原」も、中澤さんの言う通り、あれがペンギンの本来の姿なんですよ。ペンギンは草原の地面の下に巣を作るので、「草原のペンギン」ではそれをイメージしました。水族館にとって、生き物の本来の姿を見てもらうのはとても大事なことだし、お客さんにとってもきっと楽しいよね。

人が水族館に求めるのは、「水中の世界」との出会い

先生×卒業生対談

中村 学校の授業で、僕は「お客さんが反応してくれなかったら、それは展示ではありません」という話をしているんだけど、みんなは憶えているかな?

中澤 はい。導線(お客さんが館内をめぐる移動経路)のお話もされていましたよね。導線の大切さは、働くようになってからますます感じるようになりました。それまで、「見たい生き物を見てもらえばいい」と思っていたんですけど、どういう順番で見てもらうかという流れも大事なんだなって。

中村 授業では、実際の水族館でお客さんの後をついてまわって、「どこで何秒立ち止まったか」「何を観たか」を調べてもらっています。そうすると、お客さんが水槽を見ている時間は、実は滞在時間の半分ぐらいだということがわかるんです。

中澤 「この魚が見たいから来てる」というお客さんは少数ですよね。水族館という雰囲気を楽しみたくて来ている人が多い気がします。

中村 そう。実はほとんどのお客さんが見たいのは、生き物よりも「水中の世界」なんだよね。「水中の世界」を感じるために水族館を訪れる。そんなお客さんが関心を持つのは何か。そこを実感してほしいと思っているんです。大学でも学芸員を目指す人のコースに「展示学」という授業があるんだけど、生き物に興味がある人が見ることを前提にした展示学がほとんどです。みなさんが卒業した学校は、研究者ではなく、水族館で働くことを熱望している人が集まる学校でしょう? だから僕も、お客さんに見てもらうことを中心にお話ししているんです。

自分が味わった感動をお客さんに届けよう

中村 「こんな展示をしてみたい」というイメージはありますか?

大村 現在の爬虫類の展示は、野外の施設に比べると本来の生活とは違う部分もあるのかなと感じることがあります。ペンギンと同じように、爬虫類も本来の姿がわかる展示ができればいいなと思っています。

先生×卒業生対談

中村 ぜひやってもらいたいなあ。生き物の本来の姿に加えて、お客さんに「見たい」と思わせるアイデアがあるといいね。カメレオンが木々の間を飛ぶとかね。そこを思いついたらきっとうまくいくよ。

大村 「見たい」と思わせるアイデアですか…。先生はどうやって考えていますか?

中村 僕は徹底的に生態を調べます。フィールドにもよく足を運びますよ。すると、その生き物の何が魅力なのか、どうして自分が「かっこいい」と思ったのかがわかってくる。ベテランの方を含めて、水族館のスタッフのみなさんには、「自分が味わった感動を伝えるにはどうすればいいか、そこから展示を考えましょう」とお話ししています。僕がこのサンシャイン水族館で「天空のペンギン」をやろうと思ったのも、南米のガラパゴスの海に潜って、あんなふうに泳ぐペンギンを見たからなんですよ。その姿に感動して、みんなにも見てもらいたいと思ったんです。僕は、子どものころに川に潜って見た水の流れの美しさがいまでも忘れられないんです。大人になってからも、水中に潜ると波の泡の美しさに感動します。地球の鼓動を感じるというか、お客さんにそんな光景を見てもらいたいと思っているんです。

中澤 私が担当しているカワウソは、狭い穴に前足を突っ込んでエサをとる習性があるので、そんな様子を紹介する展示ができたら面白いと思っています。

中村 カワウソは、穴の中にエビとかが入っていると思って、あの動きを水中でやるんだよね。だから、エサを入れたパイプを水中に沈めてみるといいかもしれない。伊勢シーパラダイスがアクリルパネルに穴を開けて、カワウソと握手できるイベントを開発したけど、あれもエサをあげるときに思いついたんだろうね。彼らの生態をもっと詳しく知れば、オリジナリティのある展示を思いつくかもしれない。自然界のカワウソを観察するのは難しいけど、探せば映像はあるはず。映像でもじっくり観察すればアイデアが浮かぶんじゃないかな。

中澤 はい。ありがとうございます。

生き物が好き。その思いを大事にしながらその先へ

中村 この業界の人はとにかく生き物が好きだし、一緒に働いている人もそうだから、世の中の人はみんな生き物が好きだと思いがちです。でも実は、ふつうの人は生物にあまり興味がないと思った方がいい。だからこそ、「伝える」ことが大切なんです。興味のない人にいかに生き物の魅力を伝えることができるか。そのためにどんな工夫をしているか。水族館の楽しさはそこで決まります。もちろん、「好き」という気持ちは大事に持っているべきです。「好き」がなければ何も始まらないからね。

千葉 はい。好きな生き物に関わる仕事ができることはとにかく楽しいし、幸せです。毎朝、起きるとすぐに「早く仕事に行きたい!」と思うんです。

中村 それはすごいね。

千葉 私は早期就職したので2年生の後期から働き始めたのですが、短い間にも実習や研修でいろいろな水族館を訪れることができました。これからこの仕事を目指す人にも、実習や研修の機会を大事にして、たくさんの水族館を見てまわってほしいですね。社会人になると、長い休暇をとりにくくなりますし。

先生×卒業生対談

中澤 この仕事を目指す人は、重労働で身体的に大変じゃないかとか、いろんな面で不安もあると思うんです。でも、生き物に携わることができる時間はかけがえがなくて、やりがいがある仕事だと、業界に入って改めて思いました。「やりたい」と思うのであれば学生のうちに何でも吸収して、飛び込んでみてほしいです。人生の貴重な経験になるはずです。

大村 僕たちは日常生活でふれあう機会の少ない動物を担当していますよね。そういう意味では、非日常的な生活をしていると思うんです。それが仕事として日常になるのだから、それだけでも毎日が楽しくなります。大変なこともありますが、それ以上に働く喜びが大きい。こういう経験ができるのは、この仕事だけではないでしょうか。

中村 自分の「好き」を大事にして、でも「好き」では終わらずに、自分はこの生き物の何が好きなのか、この子たちのいいところをみんなに知ってもらうにはどうすればいいのか。そこまで考えられるようになったら、水族館で働く本当の喜びがわかってくると思います。

【取材協力】
サンシャイン水族館

〒170-8630 東京都豊島区東池袋3-1 サンシャインシティワールドインポートマートビル・屋上 TEL:03-3989-3466

「サンシャイン水族館」は“ 天空のオアシス” をコンセプトに掲げています。
こどもから大人まで年齢を問わない水族館の魅力である、多種多様な生き物の生命の営みを見せること、アミューズメント機能としてのエンタテインメント性などは維持しつつ、全く新しい非日常空間として「癒し」「安らぎ」「くつろぎ」、そして「ココロ動かす、発見」を提供する、 “ 大人にも満足していただける” 水族館です。

海獣担当

中澤さん

サンシャイン水族館 勤務

中澤さん

ドルフィントレーナー専攻卒業

学校の魅力は、業界の第一線で活躍中の講師の方から、現場の生のお話を聞けることにあると思います。就職してから、「ああ、こういうことだったのか」と思うことがたくさんありますね。

海獣担当

千葉さん

サンシャイン水族館 勤務

千葉さん

ドルフィントレーナー専攻卒業

私は早期内定したので早めに実務を始めたのですが、1年と少しの間にも実習や研修でいろいろな水族館で勉強することができました。就職すると長い休みはとりにくくなります。実習や研修の機会を大事にしてほしいですね。

海獣担当

大村さん

サンシャイン水族館 勤務

大村さん

ドルフィントレーナー専攻卒業

水族館の仕事といっても、担当するのはイルカや魚だけではありません。ドルフィントレーナー専攻では陸上動物についても学びますし、他専攻の授業も選択できます。学校の全ての授業がいまの仕事に生きています。